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[連載] 第11回: 欲求外在型の需要創出モデルと広告業界のAI活用

広告とテクノロジーを掛け合わせた「アドテック」という言葉を耳にしたことがある方も多いことでしょう。インターネット広告の表示にAIの技術が広く組み込まれている現在、既存の広告業界は大きな変革期を迎えています。

人工知能の最先端研究やビジネスに携わる方々のお話も交えながら、人工知能の可能性と、未来の経済および経営へのインパクトについて解説していく本連載。

連載第2弾は「人工知能と広告業界」をテーマに、お二人目のゲスト、電通/電通ライブの日塔 史(にっとう ふみと)さんとお話を進めていきます。

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§ AIによってもたらされる破壊的イノベーション
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(日塔)クレイトン・クリステンセンというハーバード大学の先生が提唱した「イノベーションのジレンマ」はご存知でしょうか。業界で確固たる地位を築いている企業が、既存製品の改良に力を注ぎすぎて、新興企業やサービスによるイノベーションが出現したときに後れを取り、やがて需要を失うということを意味します。

例えばテレビについて言うと、薄型になったり、3Dや高画質になったりして、ユーザーの要求水準をテクノロジーがどんどん追い抜いていきました。ところがそんな時にパソコンやインターネットが出てくると、「テレビほど性能が優れているわけではないが、PCでも十分に番組を見られる」といった代替が起こります。

(井上)テレビにこだわって、どんどんハイスペックにしているだけでは時代遅れになってしまうということですね。

(日塔)ある程度の需要は残り、無くなりはしないのですが、メインプレーヤーが何になるかということを理解しなければなりません。そのPCも、最近スマホに置き換わってきています。井上先生の学生さんでも、「パソコンは持っていません、スマホでレポートを書いています」という方はいませんか?

(井上)います。レポートをスマホで書き、印刷するときだけ大学のパソコンルームに来て、データを移したりしています。もうパソコンもプリンターも全然持っていないんですよね。

(日塔)それも一種の破壊的イノベーションです。そして、PCやスマホが取って代わったように、AI革命によってより便利な破壊的イノベーションが生まれる可能性があるのではと考えています。つまりAIはジェネラル・パーパス・テクノロジー(汎用目的技術)なのではないかと。蒸気、電気、ITが今までの産業革命を牽引してきましたが、次はAIがこれに当たると考えられます。中でも、私が注目しているのは「CPS」という概念です。

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§ 物理空間に働きかける「CPS」という概念
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(日塔)「CPS」は「サイバー・フィジカル・システム」の略です。「フィジカルな空間」が私たちの住んでいる世界を指し、そこに、インターネットやセンサーなどが行きわたる「サイバー空間」が入り込みます。それがIoTの世界です。そのセンサーで取得されたデータが数値化され、それを人工知能が解析し、具現化して物理空間に戻すという仕組みがCPSです。

(井上)物理空間に働き掛けるということですね。

(日塔)そうです。今、GoogleやFacebookが得意なのが、欲しいものや知りたい情報をいかに最短距離で手に入れられるかという、「欲求内在型の供給最適モデル」です。自分が欲しいもの、知りたいことがある程度分かっていて、検索でそれらを引き出し、その欲求に対して供給を最適化していくことが目的です。

一方、本来広告業界が持っていた強さは、自分が欲しいと思っていなかったものでも、「なんかいいな」と思わせる仕掛けです。例えば、テレビCMでビールをクッと飲んでいるのを見て、「あっ、なんかビールが飲みたくなった」と思わせたり、PCの画面に全然知らなかった商品が現れて、「おっ、何だろうこれって」とクリックし、ついつい欲しくさせたり、というものです。自分の欲望は、もともと自分自身の中にはなく、外側からやって来るようなイメージです。それを私たちは、「欲求外在型の需要創出モデル」と呼んでいます。需要自体をつくり上げることも、広告業界の一つの大きな役割です。

繰り返しますが、両方が重要です。そして、まだまだ広告業界が果たせる役割があるのではないかと考えています。

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§ 「エモーション・ドリブン型」へのAI活用
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(日塔)これは「デマンド・ドリブン型」ではなく、「エモーション・ドリブン型」と言ってもいいかもしれません。「これが欲しい」というところから始まるわけではなくて、「目の前にあるものに心が動く」ところです。私たちは、テクノロジーを活用して、エモーションに働きかけていきたいと考えています。

そして、感情に訴えていくのに人工知能が向いている面があるのではないかと思います。例えば、SiriやAlexaなどのパーソナルアシスタントには、人工知能だからこそ何でも安心して相談できるのかもしれません。また、もともと人工知能は人の頭脳を真似て作られたものですので、感情を揺さぶることに関しても得意なのではとも思います。ちょっと怖い部分もありますが。

(井上)確かに。人工知能学会などで、そういった倫理についても検討していくことになるでしょう。

(日塔)人間の感情をどこまでコントロールしていいのかは、必ず問題になると思います。広告業界としても、透明性の高いところで実験を繰り返しながら、こういった領域に関しても知見を深めていく責務があるのではないかと考えています。

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※この『AIとビジネスの未来』は駒澤大学経済学部准教授 井上智洋氏の講義の一部を本メールマガジン用に改編したものです。
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AIとビジネスの未来 2019.03.19 [vol.29]

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