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[連載] 第7回: 日本は盛り返していけるのか

目覚しい発展を遂げている人工知能。このまま技術開発が進んでいくと、あらゆる人間の労働は、人工知能とそれを搭載したロボットなどの機械に代替され、私たちの生活、社会、経済構造が劇的に転換されるでしょう。

本連載では、人工知能の最先端研究やビジネスに携わる方々のお話も交えながら、人工知能の可能性と、未来の経済および経営へのインパクトについて解説していきます。

「人工知能の現状と2歩先の未来」をテーマに、ITジャーナリストとしてAIに幅広い知識をお持ちの、株式会社エクサウィザーズ「きまぐれAI新聞」編集長 湯川鶴章さんと進めてきた第1弾のお話は今回が最後となります。

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§ 翻って日本は? 客観的に現状を捉える
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(湯川)前回までお話してきたとおり、AIや科学技術において米中が他国を引き離しています。そのような中、日本がトップを目指していく必要はそもそもあるのでしょうか。私は日本が世界的に見てOne of Themでしかない現在、そもそも2強に立ち向かうべきであるという議論自体がおかしいように思います。米中の2強はほぼ確定です。

GDPはまだ3位ですので、技術力も3位くらいにつけていてもいいのではとも思いますが、学生の数や、資金の集まり方、またこの5年間での企業の伸びなどを見ても、その難しさがよく分かると思います。世界のテクノロジー企業の時価総額20番以内に日本企業は1社も入っていないことからもおわかりいただけるでしょう。

(井上)現在、日本の科学技術力は相対的に低下しているだけではなく、絶対的に低下してきています。科学技術の成果は、論文の数で比較するのが一つの指標となりますが、論文の絶対数が減っているのです。科学技術における日本の政策が間違えてしまったと私は思っています。科学者の人たちも本当はもっと活躍したいと思っているのに、活躍する環境が与えられていないという、とてももったいない状況です。

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§ 日本がTake offに乗り遅れたその先には…
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(井上)私は、「AIの時代になると、AIに仕事をさせるから人は楽になる」という未来を描いていますが、一方で「これから世界は分岐していく」とも思っています。経済成長率が圧倒的に上昇していく国と、緩やかにしか成長しない国とに分かれて行くのです。ちなみに、日本は経済成長率がここ20年くらい0.9%程度、アメリカは2%程度です。

爆発的に成長していく国が爆発する瞬間を「Take off」と呼びます。どの国が最初にTake offするかを考えると、2016年の時点ではアメリカではないかと本に書いたのですが、今言うならば、中国なのではないかと思っています。つまり、最初の産業革命におけるイギリスのような立場に中国がなるのではと思います。そして少し遅れてアメリカ、日本はかなり遅れてからTake offということになるのではないでしょうか。

遅れてTake offするとどんな不利益を被ることになるか、実際のところはわかりません。最初の産業革命では、イギリスをはじめとするヨーロッパ諸国が世界を支配してしまって、中国やインドが食い物にされてしまった歴史があります。日本はぎりぎりTake offができたという状況でした。

今度はそれと逆のことが起きて、アジアでは中国・インドが先にTake offしていって、日本はまだ鎖国時代のようなイメージで語られる後進国になってしまう可能性もあります。ですから、そうなる前にAIについてちゃんと研究していくべきだと、私は著書の中で書いています。

(湯川)そういえば、井上先生はそんなに汗して仕事しなくていいということを本で書いていましたよね。

(井上)AIの研究開発が進みTake offしていくと、人間が仕事を必死にする必要はなくなり、ゆとりが生まれてきます。働き方改革が叫ばれている割に、日本はいつまでたってもAIが導入されず、額に汗して働くことが尊いという価値観も変わりません。結局1日に10時間も12時間も労働しているのに、中国の人たちより圧倒的に賃金が低いという状況になるでしょう。今ですら、初任給で40万円くらいもらえる中国沿岸部の企業に比べると、日本の初任給は相変わらず18万円程度と、圧倒的に低いですよね。

(湯川)最近、人も空気も文化も、そして食べ物もいいからと、給料が低くても日本に行きたいという中国人の話も聞きます。

(井上)もはや日本が古きよき国として、ノスタルジーを感じさせ、中国で成長した人がのんびり生活するために何週間もやってくる、そんな国になるのでもいいのかなと思ったりしますが、そんな国でいいのだっけ、とも思います。

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§ シリーズ第1弾を振り返って
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(井上)日本はAIに関しては人材の層が薄く、中国やアメリカと比べるとAI研究者も少ないため、なかなか前に進まないというのが現状です。もう少し積極的にAIを研究開発して導入を進めていきたいところです。

導入した分、私達の仕事や生活は楽になり、より余暇を楽しめるようなそんな社会になっていくことにつながります。つまり、AIについてがんばることは、がんばらなくていい社会にするためと言ってもいいかもしれません。AIを追っていくのはとても興味深く楽しいので、引き続き連載をお楽しみください。日本が今後盛り返していくきっかけについても、一緒に探っていきたいと思います。

(湯川)まずはAI技術やプログラミングだけでなく、幅広くデジタル技術を追っていくことが大切だと思います。例えばこれからはブロックチェーンも日本にとって大切な技術になっていくでしょう。そんなデジタル技術を追って最先端でいることがまずは重要です。

そして同時に、自分は何をしたいかという本質を突き詰め、両方やっていく必要があるのではないかと思います。半導体が伸びるといわれて一生懸命それを作ってきた国が成功したかというとそうでもなく、Appleのようにデザインが本質であると重きを置いた会社が伸び続けていたりします。

ですから、デジタルテクノロジーにプラスして、デザインなのか、アートなのか、はたまた自分の生きがいなのか、その2つを併せ持つことがこれからの時代重要なのではないでしょうか。

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※この『AIとビジネスの未来』は駒澤大学経済学部准教授 井上智洋氏の講義の一部を本メールマガジン用に改編したものです。
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AIとビジネスの未来 2019.01.22 [vol.25]

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