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[連載] 第12回:IoT時代の広告業界の可能性

広告とテクノロジーを掛け合わせた「アドテック」という言葉を耳にしたことがある方も多いことでしょう。インターネット広告の表示にAIの技術が広く組み込まれている現在、既存の広告業界は大きな変革期を迎えています。

人工知能の最先端研究やビジネスに携わる方々のお話も交えながら、人工知能の可能性と、未来の経済および経営へのインパクトについて解説していく本連載。

連載第2弾は「人工知能と広告業界」をテーマに、お二人目のゲスト、電通/電通ライブの日塔 史(にっとう ふみと)さんとお話を進めていきます。

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§ IoTのエコシステム
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(井上)私たちの生活にどうやってAIを組み込んでいくかというのが一つの課題だと思います。どのような仕組みがあればいいのでしょう。

(日塔)まずはIoT時代のエコシステムということでお話ししましょう。まずインプットにおいては、センサーやスマートフォンなどによってなされます。そして、集まったデータをAIで解析させ、具現化する。それがまたアウトプットされてユーザーに届けられるという仕組みです。

サイバー・フィジカル的な観点で言うと、データがフィジカル空間からサイバー空間に飛び、またフィジカル空間にぐるっと戻っていくイメージです。

私たちの生活は、ある意味スマホでそれが完結しているように感じられる部分もあるかと思いますが、これは情報のインプットも、そのリアクションであるアウトプットもすべてスマートフォン上で行われているためです。

例えば、スマートフォンで自分の位置が分かるGPSでは、スマホからGPSセンサーが衛星に飛んで、それがまたスマホに戻ってきて、地図アプリ上で「あなたは今ここにいます」といったことが示されます。つまりアウトプットされているということです。裏のバーチャル空間では様々な機械やクラウド、衛星などが組み込まれているのですが、私たちの目に見える形としては、すべてがスマホで完結しているように感じられるというわけです。

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§ 受容性が高まってきた、位置情報の広告活用
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(井上)すでに広告に活かされている例などはあるのでしょうか。例えば、位置情報が分かっていれば、その人のスマホに、近いお店の広告を出すということも考えられるのではないかと思います。

(日塔)位置情報に関しては、GPSが昔からあるため、テクノロジーとしては比較的簡単だと思います。最近、広告業界でもそういったことをやり始めて、ホットなトピックスになっています。

一昔前なら、恐らく自分自身の位置に応じて広告が配信されると、気持ち悪さを感じていたと思うのですが、皆さんある程度こういった情報には慣れてきている印象です。

これを、「受容性が高まる」という言い方をします。広告は人の心情に寄り添わなければいけないという特性から、テクノロジーが先にあったとしても、皆さんが喜んでくれるような状態にならないと社会的な普及は難しいと考えています。ようやく今、受容性が追いついてきたため、位置に応じて広告配信できるようになり始めているわけです。

(井上)技術的には可能だったけれど、消費者の気持ちが追いついてくるのを待っていたということですね。

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§ 受容性が高まっていない、カメラを利用したマーケティング
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(日塔)これまでは、スマホがあまりにも中心的な存在でしたが、IoT時代になるとスマホだけではなく、センサーがいろいろな所につきます。例えば、監視カメラもそうです。防犯上の理由などから、中国やロンドンをはじめ、世の中はすでにセンサーだらけになっています。

それらを有効活用していくと考えると、これからはスマホだけではなくなってきます。世はまさしくIoT時代、インターネット・オブ・シングスなわけです。世の中がセンサーだらけになり、ディスプレイだらけになるというところまできています。ここで広告業界としても果たせる役割があるのではないかと、今、考えているところです。

(井上)そうするとフィジカルな情報を、サイバー空間で分析して、それでまた広告として提示することになると思います。例えば、街にあるカメラによって、そこにいる人たちの顔や姿、ファッションなどを画像認識し、性別や年齢、もしかしたら、趣味嗜好まで分かってしまうこともあるかと思います。それらの人たちにふさわしいデジタルサイネージをその場で出すということも、例えば狙っているっていうことですか。

(日塔)実は一昨年、実験的な広告を行ってみました。ある刑事ドラマのプロモーションで、デジタルサイネージの前に足跡を置き、そこに立った方の顔をカメラで確認し、性別と年代を判断。それに合わせてセリフの内容を変えた、デジタルサイネージ上の刑事が「ちょっといいですか」と聞き込みをしてくるというものです。

(井上)簡単ですけれど、顔の画像認識の部分でAI的な要素が組み込まれていますね。

(日塔)はい。ただ、イベント感があるものについてはまだいいのですが、カメラに関しては、やはりまだ気持ちの悪さを感じる人が多いように思います。お店に入った際、お店のカメラで、性別、年齢を推測されて、スマホにクーポンをバチっと送られてきたりすると、先ほど言った受容性の問題で、「何でこんなこと分かるの」と不信がるかもしれません。また、「こんなの要らないよ」とも思うかもしれません。

そしてルール作りも必要です。本人の利用許諾の取り方が大切な要素になってきます。ちょうど今、カメラを使ったマーケティングに関してのルールを整備しようとしているところです。ですので、もしこの法整備や社会受容性が高まれば、将来的にこういった広告のスタイルが一気に普及するかもしれないと考えています。

(井上)技術のほうが先に進んでしまっていて、制度のほうが追いついてないため、なかなか実現できない部分があるということですね。

(日塔)おっしゃるとおりです。

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※この『AIとビジネスの未来』は駒澤大学経済学部准教授 井上智洋氏の講義の一部を本メールマガジン用に改編したものです。
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AIとビジネスの未来 2019.04.02 [vol.30]

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