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[連載] 第8回: 人工知能と広告業界の基礎知識

広告とテクノロジーを掛け合わせた「アドテック」という言葉を耳にしたことがある方も多いことでしょう。インターネット広告の表示にAIの技術が広く組み込まれている現在、既存の広告業界は大きな変革期を迎えています。

人工知能の最先端研究やビジネスに携わる方々のお話も交えながら、人工知能の可能性と、未来の経済および経営へのインパクトについて解説していく本連載。

連載第2弾は「人工知能と広告業界」をテーマに、お二人目のゲスト、電通/電通ライブの日塔 史(にっとう ふみと)さんとお話を進めていきます。

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§ シンギュラリティの概念はブラックホールから
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(井上)まずは、日塔さんがどんなお仕事をしているかというところから伺いましょう。

(日塔)紆余曲折あり、まずは日経新聞社からスタートし、修士を挟んでアニメ制作会社に、その後、電通に入りました。電通の中でも、最初は製作委員会という方式でアニメ番組や映画などのコンテンツを作っていく仕事をし、その後、デジタル部門、イベント部門を経て現在はイベント部門のプランナーをしています。まずメディアの仕事をし、コンテンツの仕事をし、サイバーな仕事をし、フィジカルな仕事をしているという形です。

後ほどご説明しようと思いますが、この「サイバー」と「フィジカル」ということが、今後、広告を中心とするマーケティングにも、非常に重要な概念になってくるのではないかと考えています。

(井上)次にお聞きしたいのは、最近AIと並んで、シンギュラリティという言葉もかなりはやっていますが、日塔さんとしてはどのように考えられていますか。

(日塔)人間の知能を人工知能が超えるという意味合いで使われることが多いですが、そもそもシンギュラリティという言葉は、物理学用語です。ブラックホールの中には、理論上、大きさがゼロなのに、重さが無限大であるという地点があるのだそうです。そこがシンギュラリティ(特異点)です。もう誰にも想像がつかない、そういった意味から、人間の想像がつかない地点をシンギュラリティと言うようになりました。ですから、人工知能が進化して、想像もできないようなことが起こる世界を、今、メディアではシンギュラリティと呼んでいるということです。

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§ エクスポネンシャルなテクノロジーの世界
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(日塔)シンギュラリティという言葉が使われるのは、人工知能だけではないということです。さらに言うと、テクノロジー全般で、シンギュラリティという言葉は使われています。テクノロジカル・シンギュラリティといった言い方もあります。

人間は1の次は2、2の次は3であると技術進化が直線的だと考えがちですが、技術進化というのは、1の次が2だとすると、2の次は4。4の次は8と、指数関数的に進化をしていきます。

(井上)倍々で増えていく感じですね。

(日塔)はい、倍々で増えていきます。それを、「エクスポネンシャル=指数関数的である」と言います。1が2になり、2が4になるという世界では、はじめのうちテクノロジーは水平的で無変化に感じられる時期が長く、ゆっくり進むのですが、あるポイントになると、急に進化が加速し、想像もつかないような垂直に近い進化のカーブを描くようになります。この垂直になる「究極の1点」がシンギュラリティです。

シンギュラという言葉にはシングルという語が入っていますが、一神教的な強さを非常に感じます。今、企業活動の中でもうまくこの力を利用して、ものすごく成長している企業がたくさん出てきているのではないかと思います。

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§ キャズム越えとティッピングポイント
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(日塔)シンギュラリティがこれだけ普及する前から、この倍々ゲームに似たような考え方がマーケティング業界にあったなと思い出しました。

一つはジェフリー・ムーアというアメリカの学者が提唱した「キャズム越え」という概念です。エヴェリット・ロジャースによる「イノベーター理論」というものがまず下敷きにあり、世の中に革新的な商品やサービスが行き渡るときに、まず、「イノベーター(革新者)」がそれを取り入れ、次に「アーリーアダプター(初期採用者)」といわれる先見の明のある人たちが取り入れ、その後、「アーリーマジョリティ(前期追随者)」、「レイトマジョリティ(後期追随者)」らが続いて、最後まで動かない「ラガード(遅滞者)」がいるという考えです。

キャズム(溝)とは、これらのうち、ごく初期の二つの層と、一般に普及し始めるところには溝があり、その溝さえ越えれば一気に物事が普及していくという考え方です。日本ではこのキャズムという言葉がマーケティング用語としてとても普及しています。

もう一つは、「ティッピングポイント」です。これは、物事がある一定の閾値を超えると爆発的に全体に広まっていくという地点を指します。感染症などが良い例です。インフルエンザが流行り一気に学級閉鎖にまでつながってしまうことをイメージしていただければよいかと思います。口コミやマーケティングの世界でもそういった現象が起こるということです。

今回は、アドテックのベースとなる考えや概念をご説明しました。次回からはアドテックを紐解き、既存の広告業界の在り方の考察を進めると同時に、ユーザーの欲求を最適化するためにAIデータを活用するということだけではなく、感情に働きかけ、新たに需要を創造するものにもAIは活用できるというお話をしていきたいと思います。

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※この『AIとビジネスの未来』は駒澤大学経済学部准教授 井上智洋氏の講義の一部を本メールマガジン用に改編したものです。
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AIとビジネスの未来 2019.02.05 [vol.26]

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