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[連載] 第5回:日本の相対的なAI技術開発力に迫る

目覚しい発展を遂げている人工知能。このまま技術開発が進んでいくと、あらゆる人間の労働は、人工知能とそれを搭載したロボットなどの機械に代替され、私たちの生活、社会、経済構造が劇的に転換されるでしょう。

本連載では、人工知能の最先端研究やビジネスに携わる方々のお話も交えながら、人工知能の可能性と、未来の経済および経営へのインパクトについて解説していきます。

今回も、「人工知能の現状と2歩先の未来」をテーマに、ITジャーナリストとしてAIに幅広い知識をお持ちの、株式会社エクサウィザーズ「きまぐれAI新聞」編集長 湯川鶴章さんと、実際の経済に即しながらお話ししていきたいと思います。

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§ 日本のAIは遅れている? 遅れていない?
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(井上)AIに関してはアメリカ企業が提供するサービスが多いため、日本はAIを含めて先端的な科学技術の面で遅れをとり始めているのではないかと危機感を覚えています。その点について湯川さんはどうお考えでしょうか?

(湯川)僕は遅れてはいないと思います。今はインターネット上での情報共有が進んでいるため、すぐに情報が取れますし、ソフトウエアもオープンソースですので、実質的に遅れるということはほぼありません。

ニューヨークシティマラソンで例えてみましょう。みんなが走っている中で、誰が遅れているかということよりも、まずは、どんな人が何人いるかが重要なのではないかと思います。ニューヨークシティマラソンの中には日本人のランナーもいて、遅れてはいないのです。先頭集団にも何人かは入っている。でも前を行く選手はすべてアメリカ選手だし、全体的な人数も多いよという状態です。日本のAIというのは、今このような感じなのです。

ですから、日本のAI技術が遅れているわけではなく、プレーヤーの数を見ると周りは全部アメリカ人か中国人であり、そして、日本のプレーヤーが少ない。最先端のこともやっているのだけれども、層の厚さがぜんぜん違うということだと思うんですね。

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§ 日本のAI研究者は世代に偏り
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(湯川)さて、今AIは3回目のブームを迎えています。1956年頃に「AI第1次ブーム」があり、「第2次ブーム」は1980年代にありました。実は3回目であるということを知らない方もいるかもしれません。

20世紀の間には、AIは役に立つサービスをあまり生み出せないで終わってしまったのですが、例えば、郵便番号の自動読み取りなども広い意味では画像認識の人工知能です。21世紀、特に2010年代から第3次ブームが始まって、日本では2016年あたりから騒がれ始めて、今に至ります。

第2次ブームと第3次ブームの間は冬の時代と言われるのですが、みんながAIに見向きもしないという時期がありました。特に日本はその冬の時代が長く、そして深すぎました。アメリカやカナダでは、細々とではありますがAIの研究が続いていた一方で、日本はほとんどの研究を止めてしまっていたのです。そのため、日本のAI研究はだいぶ衰えてしまっていて、60~70代など第2次ブームの頃の研究者の方はいらっしゃるのに、30~50代があまりおらず、ようやく最近20代の研究者が増えてきたという状況です。

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§ AI業界における中国の急速な追い上げ
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(井上)湯川さんがおっしゃるように、日本が1億2千万人いる中で、AIを研究している人の割合がかなり少ないと言えると思います。一方で、もともとはAIを含めた科学技術の研究はそこまで進んでいたわけではなかった中国が、現在ものすごい勢いで追い上げてきています。

(湯川)はい、中国は現在、ものすごく重要な国になっていますので、中国との比較をしながら日本の位置を見ていきましょう。

1980年代に行われたAIとチェスの戦いや、その後の各種AIコンテストでは、上位に入賞しているのはアメリカのチームばかりで、あとはドイツ、イギリスがいる程度でした。中国は参加チームなしで、この時期はほぼAIへの取り組みはなかったと言えます。

ついに2010年くらいになり、画像認識のコンテストで中国が初めて11位に入ってきます。そして、いよいよ2018年の質疑応答システムのコンテストでは1位はアメリカ、2位はアメリカと中国の合同チーム、そして3~5位は中国のチームとなったわけです。ここ数年で一気に中国のチームが力をつけてきました。

たとえば、2018年5月29日の世界のテクノロジー企業の時価総額によると、5位まではアメリカが死守していますが、中国がものすごく追い上げてきています。20番以内にアメリカと中国以外の会社はありません。日本もいません。もうITの世界はアメリカと中国が覇権を握ってしまったということです。

次回はもう少し、中国の台頭について詳しく見ていきたいと思います。

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※この『AIとビジネスの未来』は駒澤大学経済学部准教授 井上智洋氏の講義の一部を本メールマガジン用に改編したものです。
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AIとビジネスの未来 2018.12.18 [vol.23]

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